梯子を下りて、屋上の入り口に立ってから、あたしを見た。 まだ櫻田君の温もりがそこにあって、あたしは座り込んだまま動けないでいた。 抱き締められたのなんて…初めてと言っても過言ではないもの。 「早くしろよ、浅村」 「っ…あ、はい」 ハッと我に返り、返事をする。 身体は動かないまま。 「……何だよ、仕方ねぇな」 櫻田君はそう呟くと、再び梯子を上がってきてくれた。