キョロキョロと忙しなく動く蒼空に笑いながら林を進む。もうすぐ目的地に着くはず。
「……あれ、」
ふと時計を見る。俺たちが林に入ってから既に二十分が経とうとしていた。
おかしい。
もう着いてもいい筈なのに。あいつらの所に戻ってたって不思議じゃない。
―――ここ、どこだ?
「…橘君、?」
不安そうな顔で俺の顔を覗き込んでくる蒼空。心配させたくはないが、動揺を隠せない。
連絡を取ろうと携帯を見てみても……。
「圏外かよ…」
あぁ、やべ。
「…橘君……」
「心配すんな、俺がいるだろ」
そんな強がりを言ったものの、解決策が見つからない。このまま歩き続けても余計迷うだけだろうし。
どうする、どうすればいい?
「っ、きゃあ!!」
突然蒼空が声を上げ俺から離れた。何かに怯えながら木々の奥へ走り出す。
「待って蒼空ちゃん!」