「いや、そういう気にはなれない」

「そうですか」

魅弦は閉じられたスケッチブックを見た。

「これでこのスケッチブックは無効化しました」

「…だが存在はある」

「でも持ち主はいませんよ。このままここで保管しておけば、誰も使いません」

あくまでも笑顔の魅弦の姿を見て、真名は抑えていた心が爆発した。

湯飲みの茶を、魅弦の顔にかけた。

 ばしゃっ!

はねた茶は真名の手にもかかった。

それは少量ながらも熱かったのに、魅弦の笑みは揺るがない。

「お前ってヤツは!」

真名は続いて、スケッチブックを投げ付けた。