血の色に染まったスケッチブックの前に座り、筆を絵に当てる。

スッと筆を走らせると、絵が消えた。真っ白になる。

続いて筆を動かすと、絵は消えてゆく。

「一度描かれたものについては、もうどうしようもできません。しかしその筆の上から何かを描くことはできません。―二度と、ね」

後ろで魅弦が笑っている気配がした。

けれど真名は何も言わず、手を動かし続けた。

やがて伊和未の絵は消え、ページは真っ白になった。

女の子が描いた絵だけではなく、女の子の血の跡も全てが消えた。

「…とりあえず、ここではコレを消せればいい。人が集まってくる前に、店に移動しよう」

「そうですね」

真名はスケッチブックを閉じて、席を立った。