魅弦に名を呼ばれ、

 どくんっ!

心臓が高鳴った。

「がはっ…!」

思わず咳き込むも、しかし視界がクリアになり、呼吸も落ち着いてきた。

血の匂いはまだ鼻につくものの、冷静さを取り戻しつつあった。

「ぜぇぜぇ…。すっすまない」

「いいえ。立てますか?」

「何とか…」

魅弦に支えてもらいながら、立ち上がった。

「真名さん」

魅弦は例の箱を取り出した。

「ああ、分かっている」

真名は箱を受け取り、開けた。

中には一本の真っ白な筆が入っていた。

筆を取り、スケッチブックに近付く。