器用な親父はそういうのが得意で、気が付けば髪はいつも親父が切ってくれていた。



小学生の頃、なにを思ったのか母ちゃんがハサミを持ち出したことがあって。



それから1ヶ月、俺のあだ名が『マッシュ』になってからは切らせてない。



要するに、母ちゃんに髪を切らせたらマッシュルームの完成だ。



だから今回も親父に頼む。



「はい、コーヒー」

「ちー…」

「なぁに?」

「楽しそうだな」

「わかる!?友達できたの!!麻衣子っていうギャルなんだけど、さっぱり意味わかんなくておもしろいんだよね」



意味のわからないヤツと友達になれるちーがすげー…。



でもちーにとったらいいことなのかも。



少しは人生が楽しくなるだろうか。



「千衣ちゃん、ネクタイ曲がってる~」

「あっ、えへへっ…」

「カワイイね~、娘ってこんな感じかな?」



そうやって笑ってる方がいい顔してると思う。



泣いてるより、笑った方がお得な気がする。