口まわりに付いた泡を腕で拭った。




昂太が見つめる先にはテレビがある。


黒い画面を何も考えずに見ていると、薫の微笑む姿が映った――――――




「―――――っ!」



昂太はあわててリモコンを取って電源を入れた。


ついた局はちょうどニュースをしていた。


アナウンサーが薫とはまったく違う雰囲気の女性だと確認してほっとした。




「………何、考えてんだよ。俺…」



リモコンを取るために少し浮かせていた腰をへなへなとまた座らせ、顔を両手で覆い、俯いた。



―――――…二人を祝福したいと心から願う自分と、まだ奪えるのではと期待する自分がせめぎあっている。




「好きだからこそ、薫さんの幸せを願うんだろ…!」



言い聞かせるように、でも頼りない声で呟いた。




こんな気持ちになんて、初めてなった。




―――――…悠斗もこんな感じの想いを抱いてたのかな?



悠太の双子の兄弟の名が思い浮かんだ。


彼もかつて(現在もかもしれないが)薫を大切に思っていた。


当時は、双子は大変だなー!なんてからかっていたが、今置かれている状況を悠斗が見たら、きっと勝ち誇ったような顔で昂太を見下すだろう。



ほらな、…―――――――



とでも言わんように。