そんなことない。 悠太は悪くない。 言いたいのに言えない…。 薫は肩を抱き寄せられた。 『もう、平気だから。俺がいるから…』 力なく呟くその声とは裏腹に、抱き締める力は強くなる。 薫は安心したのか、涙を一粒流した。 頬をつたう涙を優しく拭い、まるで壊れものを扱うが如く薫の唇にキスを落とした。 柔らかな熱が震える唇を包み込み、そっと安心へと導いてくれる。 薫にとって、それはある意味でも忘れられない日だった。