ヴォルキーやチーリェフは、見かけこそ狼や虎だが、人を襲うなど、聞いたことがない。
産まれてからずっと、この地に封じられていたサダクビアは、詳しいことは知らないのだろう。
確かに見かけは恐ろしい。
それに、おそらくヴォルキーらがサダクビアを狙うのは、今まで喰らったものの、血の臭いが辺りに漂っているからだろう。
人間にはわからなくても、獣にはわかるのだ。
「お前はやっと、コアトルに触れることができたのに、何とも思わなかったのか」
ラスは思わず己のコアトルに触れていた手に、力を入れた。
サダクビアは、少しだけ驚いたように、目を見開く。
『兄上が、そのようなことを言われるとは。兄上の傍にも、誰もいなかったはずでは? わらわの気持ちを、兄上ならおわかりいただけるじゃろ?』
「人がいなくても、コアトルがいれば良いではないか!」
サダクビアの片眉が跳ね上がる。
『兄上・・・・・・。そうではありますまい』
一気に辺りの空気が変わる。
ぞくりとするような光が、サダクビアのサファイアの瞳に灯り、ラスは知らず、ごくりと喉を鳴らした。
サダクビアが、ラスの腕の中に視線を移す。
『その者がいたから、兄上の心は穏やかになったのでしょう?』
憎々しげに、メリクを睨み付ける。
メリクが息を呑んで、身体を強張らせた。
「よせ! 何故そんなにこいつを憎むのだ。お前の話が本当なら、こいつはお前自身ということじゃないか」
『左様。その者はわらわじゃ。その身体は、わらわのもの。・・・・・・返してもらうぞ』
産まれてからずっと、この地に封じられていたサダクビアは、詳しいことは知らないのだろう。
確かに見かけは恐ろしい。
それに、おそらくヴォルキーらがサダクビアを狙うのは、今まで喰らったものの、血の臭いが辺りに漂っているからだろう。
人間にはわからなくても、獣にはわかるのだ。
「お前はやっと、コアトルに触れることができたのに、何とも思わなかったのか」
ラスは思わず己のコアトルに触れていた手に、力を入れた。
サダクビアは、少しだけ驚いたように、目を見開く。
『兄上が、そのようなことを言われるとは。兄上の傍にも、誰もいなかったはずでは? わらわの気持ちを、兄上ならおわかりいただけるじゃろ?』
「人がいなくても、コアトルがいれば良いではないか!」
サダクビアの片眉が跳ね上がる。
『兄上・・・・・・。そうではありますまい』
一気に辺りの空気が変わる。
ぞくりとするような光が、サダクビアのサファイアの瞳に灯り、ラスは知らず、ごくりと喉を鳴らした。
サダクビアが、ラスの腕の中に視線を移す。
『その者がいたから、兄上の心は穏やかになったのでしょう?』
憎々しげに、メリクを睨み付ける。
メリクが息を呑んで、身体を強張らせた。
「よせ! 何故そんなにこいつを憎むのだ。お前の話が本当なら、こいつはお前自身ということじゃないか」
『左様。その者はわらわじゃ。その身体は、わらわのもの。・・・・・・返してもらうぞ』


