「ただ自分の中に、‘そうなる’という確信めいたものがあります。サダルスウド様に拾われたときも、ラス様の元に上がったときも。‘なるべくしてなった’と思うのです」

そして今は、氷の美姫の元に、きっと行くという確信の元、実際にその場所へ向かっている。

「サダルスウド、呪いとは何だ? 俺は戴冠の際、直接トゥバンより神託を受けた。呪いを解放せよ、という内容だったぞ」

「何ですと?」

サダルスウドの顔が変わる。
そのまましばらく考え、サダルスウドは意を決したように、顔を上げた。

「戻りましょう。・・・・・・そのような神託を受けておられたとは。何という・・・・・・何と、不吉な・・・・・・」

「何を言うのだ。ここまで来て、今更戻れるか! それに、確かにトゥバンから降りたのだぞ。避けて通れるものではなかろう」

ヴォルキーの手綱を引き、踵を返そうとするサダルスウドに、ラスは声を荒げた。
だがサダルスウドは、首を振るばかりだ。

「とにかく、一刻も早く、少しでも遠くへ・・・・・・」

言いつのるサダルスウドだったが、次の瞬間、言葉を呑み込んだ。
ごおぉぉ、という音が、徐々に大きくなる。

---風・・・・・・?---

ラスが音のする前方を睨んだ瞬間、いきなり物凄い突風が、三人に襲いかかった。
意思を持ったかのような風は、妙にうねり、狙い定めた三人を包み込むと、そのまま彼らをイヴァンの北の果てに連れ去った。