「お前な・・・・・・。こういうときぐらい、髪を縛ったらどうだ」
上空の風に煽られて、メリクの色のない髪が、ラスの頬をくすぐる。
ラスも長髪だが、大抵一つに編んで後ろに垂らしている。
切ってしまいたいのだが、何故か乳母や側近が止めるのだ。
ラスの言葉に、メリクがぱっと後ろを向き、己の髪がラスの邪魔をしているのを知ると、慌てて頭を押さえようとした。
が、両手を離した途端、前からの風に押され、どん、とラスの胸にもたれてしまう。
「ほら。うかうかしてると、落ちるぞ。言っておくが、お前が落ちても、もう助けないからな」
メリクはわたわたと、ラスにもたれた身を起こして、再び両手でコアトルにしがみつく。
が、そうするとまた、髪がばさりと後ろになびいてしまう。
泣きそうになりながら、何とも情けない顔で振り返るメリクに、ラスは笑いを噛み殺した。
結局メリクは、髪を何ともできないまま、国境にたどり着いた。
そこにはすでに、イヴァン軍が待っている。
エルタニン軍が下降していくと、イヴァン軍の中から長と思われる男が進み出た。
エルタニン軍を睥睨し、首を傾げる。
他国の援軍を迎えるにしては、随分尊大な態度だ。
エルタニン国王であるラスに対して、誰も跪かない。
近衛隊長が先に降り立ち、これ見よがしにラスのほうを向いて、膝を折る。
ラスはまだ空にいるが、降り立ったエルタニンの兵士は皆、素早く乗り物から降り、その場に跪いた。
全員が、イヴァンに背を向け、ラスに向かって。
エルタニン軍全員が地に降りた後で、ゆっくりとラスは皆の中央にコアトルを降ろした。
そのまま、イヴァンの兵士を一瞥する。
ラスの視線を受け、イヴァンの隊長は、しぶしぶといった風に、膝を折った。
上空の風に煽られて、メリクの色のない髪が、ラスの頬をくすぐる。
ラスも長髪だが、大抵一つに編んで後ろに垂らしている。
切ってしまいたいのだが、何故か乳母や側近が止めるのだ。
ラスの言葉に、メリクがぱっと後ろを向き、己の髪がラスの邪魔をしているのを知ると、慌てて頭を押さえようとした。
が、両手を離した途端、前からの風に押され、どん、とラスの胸にもたれてしまう。
「ほら。うかうかしてると、落ちるぞ。言っておくが、お前が落ちても、もう助けないからな」
メリクはわたわたと、ラスにもたれた身を起こして、再び両手でコアトルにしがみつく。
が、そうするとまた、髪がばさりと後ろになびいてしまう。
泣きそうになりながら、何とも情けない顔で振り返るメリクに、ラスは笑いを噛み殺した。
結局メリクは、髪を何ともできないまま、国境にたどり着いた。
そこにはすでに、イヴァン軍が待っている。
エルタニン軍が下降していくと、イヴァン軍の中から長と思われる男が進み出た。
エルタニン軍を睥睨し、首を傾げる。
他国の援軍を迎えるにしては、随分尊大な態度だ。
エルタニン国王であるラスに対して、誰も跪かない。
近衛隊長が先に降り立ち、これ見よがしにラスのほうを向いて、膝を折る。
ラスはまだ空にいるが、降り立ったエルタニンの兵士は皆、素早く乗り物から降り、その場に跪いた。
全員が、イヴァンに背を向け、ラスに向かって。
エルタニン軍全員が地に降りた後で、ゆっくりとラスは皆の中央にコアトルを降ろした。
そのまま、イヴァンの兵士を一瞥する。
ラスの視線を受け、イヴァンの隊長は、しぶしぶといった風に、膝を折った。


