「先代王のご即位からご成婚、お子の誕生に王・王妃様両陛下が崩御されるまで関わった私には、ラス様に降りかかる運命を見届ける義務が残されております。そして、全てを知る私には、運命がラス様に災いを成すものなら、我が知識を持って、微力ながらできうる限り、お助けできれば、と」
「ご大層な心構えだな」
もとよりラスは、神官の言うことなど、端(はな)から信じていない。
が、ラスは乱暴に、自分の前の椅子を顎で示した。
「まぁいい。ではその知識とやらを、お聞かせ願おうか。父上の代のときは、お前はまだサダルスウドではなかったということか?」
ラスに促され、サダルスウドはラスの前の椅子にかけながら頷いた。
「当時はただの、最高神官でした。私は、先代王に関するあらゆる責めを負い、しかし神殿の外に出すわけにもいかぬ、という理由で、王の崩御と共にサダルスウドの位を与えられ、神殿の奥深くに閉じこめられたのです」
思った通りだ、と、ラスは目の前の老人を観察する。
「父上に関する責め、とは? 神殿の巫女を娶ったことか?」
ラスの問いに、いえ、と呟き、サダルスウドは話を続ける。
「その前の段階からです。王妃様を王付きの巫女に選んだのは、私でした。そもそも最高神官が、トゥバンの神託を受けるのですから、私が巫女に選ばれたことを通達するのは当たり前ですし、厳密に言えば、私が選んだわけではないのですが。当時私の下にいた、今の最高神官が、巫女を王妃に、という話が持ち上がったときに、トゥバンがそのようなことになる巫女を選ぶわけがないと声を上げまして。王付きの巫女を選ぶ際に、私が勝手に選んだのだと。そのときは王がお取りはからいくださいまして、事なきを得たのですが、それからもずっと、隙あらば、といった感じで、私を追い落とす機会を狙っていたのでしょうな」
「ご大層な心構えだな」
もとよりラスは、神官の言うことなど、端(はな)から信じていない。
が、ラスは乱暴に、自分の前の椅子を顎で示した。
「まぁいい。ではその知識とやらを、お聞かせ願おうか。父上の代のときは、お前はまだサダルスウドではなかったということか?」
ラスに促され、サダルスウドはラスの前の椅子にかけながら頷いた。
「当時はただの、最高神官でした。私は、先代王に関するあらゆる責めを負い、しかし神殿の外に出すわけにもいかぬ、という理由で、王の崩御と共にサダルスウドの位を与えられ、神殿の奥深くに閉じこめられたのです」
思った通りだ、と、ラスは目の前の老人を観察する。
「父上に関する責め、とは? 神殿の巫女を娶ったことか?」
ラスの問いに、いえ、と呟き、サダルスウドは話を続ける。
「その前の段階からです。王妃様を王付きの巫女に選んだのは、私でした。そもそも最高神官が、トゥバンの神託を受けるのですから、私が巫女に選ばれたことを通達するのは当たり前ですし、厳密に言えば、私が選んだわけではないのですが。当時私の下にいた、今の最高神官が、巫女を王妃に、という話が持ち上がったときに、トゥバンがそのようなことになる巫女を選ぶわけがないと声を上げまして。王付きの巫女を選ぶ際に、私が勝手に選んだのだと。そのときは王がお取りはからいくださいまして、事なきを得たのですが、それからもずっと、隙あらば、といった感じで、私を追い落とす機会を狙っていたのでしょうな」


