「そういえば、ミルバの鱗というのは、簡単に取れるものではないらしいな。女王がお前を褒めていた」
背を向けたまま、ラスがぽつりと呟いた。
相変わらず素っ気ないが、それでもイヴァン行きが決まってから、随分と喋ってくれるようになった。
それだけでもメリクは嬉しく思い、急いで身を起こした。
「喜んでいただけたのでしたら、ようございました」
ラスはちら、と肩越しに振り返った。
床の上に座り込んで、メリクが見上げている。
邪心などのない、澄んだ瞳だ。
ラスはゆっくりと、起き上がった。
「いい加減に、嫌にならないか?」
ラスの言葉に、メリクが首を傾げる。
「俺に仕えていても、何の見返りもないということは、嫌と言うほどわかっただろう? 言ったとおり、俺はお前など、助ける気もない。海に落ちるのを助けたのも、たまたま反射的に手が出ただけだ」
「でも、ラス様は助けてくださいました。コアトルにも乗せてくださいましたし、落ちそうになったときにも、掴もうとしてくださいました」
「たまたまだ」
「それでもです」
思わぬメリクの返しに、ラスは思わず苦笑いをする。
あ、という小さな声にメリクを見れば、彼女は身を乗り出して、自分を凝視していた。
何とも言えない、嬉しそうな顔である。
背を向けたまま、ラスがぽつりと呟いた。
相変わらず素っ気ないが、それでもイヴァン行きが決まってから、随分と喋ってくれるようになった。
それだけでもメリクは嬉しく思い、急いで身を起こした。
「喜んでいただけたのでしたら、ようございました」
ラスはちら、と肩越しに振り返った。
床の上に座り込んで、メリクが見上げている。
邪心などのない、澄んだ瞳だ。
ラスはゆっくりと、起き上がった。
「いい加減に、嫌にならないか?」
ラスの言葉に、メリクが首を傾げる。
「俺に仕えていても、何の見返りもないということは、嫌と言うほどわかっただろう? 言ったとおり、俺はお前など、助ける気もない。海に落ちるのを助けたのも、たまたま反射的に手が出ただけだ」
「でも、ラス様は助けてくださいました。コアトルにも乗せてくださいましたし、落ちそうになったときにも、掴もうとしてくださいました」
「たまたまだ」
「それでもです」
思わぬメリクの返しに、ラスは思わず苦笑いをする。
あ、という小さな声にメリクを見れば、彼女は身を乗り出して、自分を凝視していた。
何とも言えない、嬉しそうな顔である。


