エルタニン伝奇

ルッカサ王城で、ラスは女王に謁見した。
男性名を持つ二十代であろうルッカサ女王は、献上品として差し出されたエルタニン特産のサファイアに、嬉しそうに微笑んだ。

「まぁ。やはり貴国のサファイアは、他と違いますわね。輝きが違いますわ」

「女王様のお美しさの前では、宝石の輝きも影を潜めましょう」

「ま、お若いのに、お上手なかたですのね」

さらりと歯の浮くようなことを言うラスに、女王はころころと笑う。

「そういうあなた様も、お綺麗なお顔をなさっていますのね。あなた様のような殿方、初めて見ましたわ。確かまだ、独身でいらしたはず。ご側室も、おられないのですか?」

女王はラスに、興味津々のようだ。
女性にとっては、ラスの壮絶なまでに整った外見も、不吉なものには見えないらしい。
ただ大陸の人間とは違う肌の色、瞳の色全てが珍しいだけなのかもしれないが。

「あなた様のような殿方でしたら、どこの姫君でも、泣いて喜ぶことでしょうね」

うっとりと己を見つめる女王に、ラスは曖昧に微笑む。
国ではずっと、この外見は称讃されると同時に恐れられてきた。
このように、手放しで褒められることなど、初めてだ。

「そうだと良いんですがね」

何と言って良いものかわからず、困ったように言うラスに、女王は意外そうな顔をした。