ラスは背後に大きな気のうねりを感じ、振り向いた。
魔方陣から光の柱が噴き出し、中の二人を包んでいる。

ラスは目を疑った。
それなりに力ある神官であるサダルスウドよりも、その手を握っているメリクのほうが、より大きな光を放っている。
足元の魔方陣から吹き上げる力の風と光で、小さなメリクなど吹き飛びそうだが、どうやら力の源は、メリクのようだ。
メリクの白い身体は、まばゆい光でよく見えないほどだ。

「メリク! よせ!」

光と共にメリクが消えそうで、ラスは思わず叫んだ。
だがその声に反応したのは、サダクビアだった。

『ぬぅ・・・・・・お、おのれぇ・・・・・・。ただの小娘の分際で・・・・・・』

苦しげに呻き、サダクビアは憎悪に燃える目を、光の柱に向けた。
その様子は、まさに鎌首をもたげる毒蛇のよう。
最早ヒトであることを忘れた、憎悪の塊でしかない。

『わらわの邪魔をする奴は、全て喰ろうてくれるわ! わらわに逆らう者は、兄上とて許さん! 兄上の血で、世を呪いで満たせ! この世を、血と闇に落とせ! それこそが、わらわの望む世界じゃ!』

「そうはさせん! トゥバンよ! 今こそ呪いを解放する! 憎悪に捕らわれしコアトルに救いを! 黒き魂を浄化せよ!」

サダクビアとラス、双方叫ぶと同時に地を蹴った。
コアトルが激しく鳴いた。

ラスの宝剣が、サダクビアの身体に触れた瞬間、スターサファイアが大きな光を放つ。
同調するように、魔方陣の光も四方に弾けた。

辺りは一面、目も眩む程の光に満たされ、何も見えなくなった。