「そう思うなら、ちょっとは手加減したらどうだ?」

息をついて言うラスに、サダクビアは愉快そうに笑った。

『ほほ。手加減など、失礼にあたるかと思うておりましたに。兄上もなかなか、素直なところがおありなのですなぁ』

小馬鹿にしたように高笑いし、サダクビアはまた、にぃっと口角を上げた。
ぺろりと、唇を舐める。

『ではそろそろ、終わりにしますか。兄上がお綺麗なおかたでよかった。喰らうからには、やはり見目良い若者が良いからのぅ』

サダクビアがサファイアの瞳を細め、凶悪に微笑む。
ラスは息を整え、宝剣のスターサファイアを、己の胸---心臓に当てた。
それは不思議な熱を持って、ラスを包む。
身体中の傷が、一瞬で癒えたかのようだ。

そのとき背後で、ぎゃっとコアトルが鳴いた。
同時にサダクビアの身体が、大きく傾ぐ。

『な、何じゃ・・・・・・?』

サダクビアが驚いたように、前のめりになりながら呟く。
何かに引っ張られるのを、必死で踏み留まっているようだ。