それを気にしないふりをして私も座った。
「先輩達も勉強ですか?」
「家に帰ったら勉強しないからねー」
「分かります。あ、そう言えば、ここ先輩は湊くんと仲良しになったんですね」
「へ!?」
不意に言うものだから間抜けな声を出してしまった。今のタイミングで湊を出されるのは非常に焦る。
だけどあくまで平静を装うとするのは私の癖。そんな装いをしていつも通り頬杖をついて傍観を決め込む。
「湊くんから聞いたの?」
「いえ、この間見掛けたときここ先輩の表情が柔らかかったから何となくです」
「ひょ、表情……?」
表情なんて意識するものじゃないから分からないけどきっと柔らかかったのだろう。
「っ……」
何故か急に恥ずかしくなった。
「ここ先輩、照れてます?」
「本当だー。珍しいー」
「あーあー。そうだ!篠田さんの下の名前って何?」
茶化されるのは慣れていないので無理矢理にも程がある話題転換を試みた。
あと、私は照れてない。断じて。
だけど、二人はクスクスと笑うのだった。