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 ゴールデンウイーク中に、資料の整理などをある程度しておいた。


 連休明けの授業に備えるためだ。


 あたしは謙太とメールし合っていた。


 彼はずっと院の授業をサボって、公募するためのミステリーを書き続けているらしい。


 謙太が大学の四年間もまともに授業に出なかった過去は知っている。


 あたし自身、彼が英米文学をやっていても、そういったものに段々と興味が薄れつつあったのを感じ取っていた。


 だから創作の方に軸足を移したらしい。


 あたしは謙太がそういった方向を選んだのでも、別に構わないと思っていた。 


 ただ、英語の研究と違って創作活動は大変だ。


 あたしも作家を目指して途中で挫折してしまった人間のことは知っている。


 どういった経緯があれ、その道を諦めたのはそれで仕方なかった。
 

 だけど、挫折した人間も考えようによっては強いところがある。