学生さん

 深呼吸を繰り返して、新鮮な酸素を絶えず肺に入れる。


 何か、出発のときは胸騒ぎがしてしまうものかもしれないけれど……。


 それにこれから先、また日本列島全体が暑くなる。


 気温が上がっていくたびに、あたしたちの間にある愛情も増すと思えた。


 いくら夢見時が終わったとは言っても。


 そしてあたしたちがそれから先、手を携(たずさ)え合い、一緒に歩き続けたのは言うまでもない。


 長い人生を共にするパートナーとして。


 正門を出る際に、ハラハラと舞い落ちてきた桜の花弁が頭の上に乗っかっていることにも気付かず、あたしは謙太のアパートへと向かった。


 ゆっくりとした歩調で。


 もう互いに決して離しはしないのだから。


                 (了)