順当に行ったといえばそれまでだが、論文等を執筆する際に苦しい思いをしたのは未だに覚えている。


 そしてあたしは新年度からここ開告大で助手だ。


 謙太は三ヶ月後に決定する今年上半期の直木賞に著作がエントリーされるという。


 彼は確かにたくさんの本を出し、今でも現役でずっと書き続けている。


 あたしは謙太と進んでいく道は違っていた。


 それはあたしとしても認識できている。


 だけど仮に違う分野で活動していても、一緒にいられることに変わりはない。


 お互いそう思っていた。


 キャンパス内は薄桃色の桜が咲き誇っている。


 まるで見ているあたしたちの目を潤すかのように。


 あたし自身、感無量だった。


 この桜が旅立ちの証拠だ。