あたしは九月の幾分涼しい風に吹かれながら、前月続いた、うだるような暑さを思った。


 あの暑さがウソのようにキャンパス内は涼しくなりつつある。


 あたしは一応手持ちのバッグに薄手の上着を一枚入れ、キャンパスに通い続けた。


 院で修士の一年というと、まだ下っ端なのだが、あたしはすることが山ほどある。


 退屈している時間はない。
 

 時間に追われっぱなしでも、謙太にメールするのだけは忘れないでいたが……。