「とにかく、名前」


わたしだって先輩にあたるし、頭に当たったし。

怯まないんだからね!
例え先輩が蹴ったんだとしても!


「面倒なヤツに当たったもんだ」

「なんて?」

「イイエ、伊沢っす」


呟くようにぼそりと彼は言う。視線をずらして。

伊沢くんか。2年生かな。


「そう。わたしは浜崎真尋」


礼儀として、名乗っておく。

しかしヤツからは信じられないセリフが繰り出された。


「別に聞いてねぇよ」

「え?」


ため息をひとつ残して練習に帰っていく伊沢くん



「あんにゃろ!」

これが、始まり。