ばん、と扉が開いた。


 話を続けていたアーサーとシュリは驚いて視線を向けた。

「…あれ?起きてたんですか?」

 エヴァが立っていた。


 アーサーは何から切り出すかしばらく迷った挙句に、

「…言いたいことが色々あるのでとりあえずそこに座れ」

 床の端を指差した。



「どんなに見えなくても一応まがりなりにも年頃の娘が深夜に男部屋に来るんじゃない。あと寝間着で出歩くな。危ないから裸足はやめろ。それからノックくらいしろ、着替えてたらどうするんだ。大体もっとドアの開けかたを考えろ。真夜中は音が響くんだ。まさかカレンさんに迷惑かけて叩き出されたわけじゃないだろうな、どうなんだエヴァ様!」

「…えっと、あの、どうせ寝てると思いまして入ってたたき起こそうと、ぎゃっ」

 額を弾かれてエヴァは後ろにひっくり返った。

「いたっ、痛いです従者さま!女性に暴力振るうってどうなんですか?っていうかわたし一応主なんですけど!」

「そういうことはそれらしい行動をとってから言えー!!」


「…二人とも、静かにせんか。深夜であろうが」

 シュリが冷静に正論を吐いた。



「それで、何しに来た」

 アーサーは底冷えのする笑顔で寝台に腰掛け、長い足を組んでいた。

 爆発寸前、と注意書きをつけたくなる。


 一方のエヴァはといえば床の隅に罪人よろしく座らされている。


 シュリは半ば呆れたようにその異様な光景を見ていた。


「あの、カレンさんの力になりたいなと思って!」

「声が大きい、立ち上がるな」

「はい…カレンさんは本当のこと言ってると思うんです。それにすごく辛そうにうなされてましたし」

 エヴァはカレンの涙を思い出す。

 彼女に心から笑ってほしかった。

「一宿一飯の恩義というやつです!もしも魔物がからんでいるなら、わたしたちがなんとかできます。それに魔王の手がかりだって見つかるかも!」