乗ったことのない
立派な馬車に乗り
家へ向かう


「あそこです!
あの、木の家」


「素敵な家だな」


きっと本心だと思う
王子は自分で何かを作業する方が
好きだと言っていたから


何もかもを召し使いに
任せてしまうお城よりも。


「ありがとうございました
とても助かりました」

本当に助けてほしいのは
馬車で送ってもらう事ではない…。


あたしが馬車から
降りると王子も一緒に
降りた


「どうかしました?」


王子はあたしの腕を
軽く掴んで、


「また…会えるか?」


「え…あたしなんかが
王子に頻繁に会っては
いけないんじゃ?」


「俺はサラに王子と…
呼んでほしくはない
王子だとか気にしないでくれないか?

俺はまた会いたい」


「……気にしないのは
なかなか難しくけど…
少しずつなら
だから…あたしも…

また会いたいです」


王子は笑顔になり
手を離した


「じゃあ…明日の夕方
海に来てくれないか?
待ってるから」


「はい。分かりました」


そして帰っていった…


頬の筋肉が
妙にひきつっていたのが
よく分かった


あたしはいつまで
作り笑いを続けるのだろう

…そんな日は来るのだろうか

嘘をつき続け
人を騙して
悪に染まるんだ


……来ないかな……