人魚姫の嘘



ナンシーに誘導されて来たのは
大きなベランダ


私がワインを片手に
王子とサラの事を
告げられた場


「…ここでした…
リース様が王子に婚約者が
いると…言われた場所は」


ナンシーが何を言いたいのか
分からない


彼女は水平線をみながら
ポツリポツリと話してくれた


「リース様がこの城に来たとき
もう、分かっていました
貴女が王子を好きなのだと…


そして皮肉にも
リース様の想いを知るものは
誰1人として居なかった


リース様が悲しまれる
お姿が…余りに酷で…
見ていられなくて


今日は王子とサラ様の
結婚式…
とても生きている事が辛いでしょう」



ナンシーは私の手を
優しく包み込んで


「悲しむときは
自分がお側に居ますから」


どうして彼女は
私の気持ちをここまで理解して
涙を流してくれるのだろう


もう悪人になった私なんかに…



口元を動かし
`ありがとう'
そう彼女に伝えた


ナンシーは涙を拭き取り
「仕事に戻りますね」
と、静かにここを去った