人魚姫の嘘


紙を持つ右手が小刻みに小さく震えた
左手で口を覆い、
出ない声が出そうな程驚いた。


一枚の紙に
サラの苦しみが滲み出ていた

過去の苦しみ、
家族の苦しみ、
今の苦しみ、



…サラを見る目が
変わりそうで…
少し嫌味な言い方だと
同情になる


でも、だからと言って
王や王子を殺して良い訳にはならない



なんて。



これから人を殺しにいく
私が正論を述べても
矛盾としか言い様がない。



紙をポケットにしまい込んで
躊躇いがちに
ウェディングドレスに触れた


頭の中ではドレスを着て
幸せそうに微笑む私
隣で微笑み返す王子


そんな未来図を描いてしまう
自分がいた。