どんどん涼が近づいてくる。遠かい距離を詰めてくる。あたしは後ずさった。
でも涼の長い手が、伸びてあたしの腕を掴む。
そしてあたしの身体を強く抱きしめた。
「会いたかった」
耳元でした、かすれた声。
「眠ってる間のこと、全部聞いた。毎日俺の手握ってそばにいてくれてたんだよな」
「……っ……」
抱きしめる腕が強くなる。
あたしの心臓の音、聴こえてないかな。大丈夫かな。
「俺、お前にずっと言いたかったことがある」
「…………」
「お前が好きだ、泉。初めて会ったときから」
風が突き抜ける。言われた言葉に頭が追いついていかなかった。でも何度も噛みしめるように心の中で涼の言った台詞を復唱する。
「あたしも、好き……っ」
言えた。ようやく言えることができた。
遠回りした。何度も涼への想いを捨てようと頑張った。だけど、その度に挫折してきた。
もう、間違えない。
涼だけが好き。もう手放したくない。
もう、離れたくない。