そして──。
1週間が経って、涼が目を覚ました。
その報告を受けてすぐ病院に向かいたかったのだが、意識のある涼とどんな顔で会えばいいのかわからずに、行かずにいた。
香に「意外と乙女なんだね」と笑われた。まったくだ。自分にそんなかわいいところがあったなんて、知らなかった。
そして事件から10日後、今日は涼が学校へ来るとの情報を遥から得た。
「あ、連絡きた。今昇降口らしい」
遥がケータイの画面を見て呟いた。あたしは立ち上がると教室を出た。涼を迎えに行ったのではない。むしろ逃げた。
あたしは屋上に向かった。
涼に会えるんだと思うと心臓が落ち着かなくて、どうしてもその場にいられなかった。
空気を肺いっぱいに吸い込む。空は快晴。青くて、白い雲がよく映える。
しばらくして、後ろの扉が激しく開く音がした。
振り返ると、そこには涼がいた。
「おい、なんで逃げんだよ」
息を荒げ、汗ばんでいるのか、あごのあたりを手で拭う仕草。
「病みあがりに走らせんな」