涼が死ぬかもしれない。
そう思うと、なぜもっと早く素直にならなかったのかと悔やまれる。
ねえ、言いたいことってなに?
涼……早く目を覚ましてよ。
「ねぇ、泉くん……」
その日病室に行くと沙羅ちゃんがいた。涼の意識がなくなって5日目の日曜日だった。
重い空気に黙っていたふたり。心電図の音だけが響いていた。だけど沙羅ちゃんが口を開いた。
「あたしね、涼のこと好きだったんだ」
「え?」
「小さい頃からずっと、涼はあたしのヒーローだった」
沙羅ちゃんの微笑みは悲しくあたしの目に映る。涼を見つめる沙羅ちゃんの瞳は愛しさが含まれているように感じた。
「でもこの前振られたの。絡まれてたの助けてくれたでしょ?あのあと涼に告白したの」
「そう、なんだ……」
「好きなやつがいるって言われた」
不覚にもドキッとした自分がいた。
「あーあ、何年も想ってきたのに。この意味わかる?」
優しい沙羅ちゃんの不機嫌そうな声。
「涼の目が覚めたら、泉ちゃん、ちゃんと向き合いなよ」



