リーダーらしき男が持っていたバッドを振り下ろしてきた。
避けようとは、思わなかった。
だけど予想していた痛みも衝撃も、なにも来なかった。
代わりにきたのは、温もりだった。誰かに抱きしめられた感覚がして、おかしいなとつむっていた目を開けると、目の前に大きな影があった。
「……っ、涼……っ!」
叫んだ。涼があたしをかばうように身体を包んでいた。
バッドは鈍い音を立てていた。どこに当たったかは、次に見えた光景でわかった。
倒れ込んだ涼の頭から赤い血が溢れ出ていた。
抱きすくめると涼が「ばーか……」と微かに笑った。
「泣くな……」
「馬鹿は涼じゃん……っ」
なんであたしなんかのことをかばったんだよ……っ。
「お前のこと、ほっとけるわけねぇだろ」
あたしの頬に飛びてきた手が、そのまま触れる。大きくて温かい手のひらだ。
あたしはその手に自分の手をあてがう。
「もっと自分のことを大切にしろ。お前は優しすぎるのに、自分に厳しすぎるんだよ、昔から……」



