周りも何事かと騒ぎたてだした。
校舎の窓やベランダから生徒が身を乗り出して見ている。


あたしは覚悟を決めてフードをかぶった。


行くしか、ない。



「おい馬鹿、行くな」



あたしの肩を掴み、涼が引き止める。



「お前ひとりで片づく相手じゃねぇだろ」



そうだけど、この状況をおさめるには私が行くしかほかに方法なんてない……。



「触らないで。あたしは大丈夫だから」



拒絶した。涼の手を、冷たく振りほどいた。


そして私は運動場のほうへと歩みを進めた。



「お前が桜泉か!?」


「ああ、そうだよ……」



低い声をだした。

バイクに乗っている男たちが私を取り囲んだ。


たぶん先頭にいるのはこの暴走族のリーダーに違いない。


きっと強くて敵わない。


この人数差でやられたら、いくらあたしでもひとたまりもない。


ここで死ぬなら、それでもいい。


天を仰いだ。空は果てしなく晴れ渡っていた。

空を見るクセは涼からもらったもの。


この現状を嘲笑うように口角をあげた。



「笑ってんじゃ、ねえーー‼︎‼︎」