ふたりの仲睦まじい姿を見てぼうっとしていた。
震える沙羅ちゃんの背中に、優しく手を置くのは涼だ。
「ありがとな、泉」
「いや……」
なんでお礼言われてんだろ、あたし。
心の中で自嘲した。
まるでふたりは恋人同士みたいだ。
──ズキッ。
なんて考えて傷ついているあたしもあたしだ。
「じゃああたし行くわ」
ふたりに背を向けて歩く。
不安そうに顔を歪める里佳にも「ごめん、もう帰る」と別れを告げた。
その日の夜、あたしは久しぶりにデスロードに赴いた。
思いきり喧嘩して、この心のモヤモヤを吹っ飛ばしたくなったからだ。
だけどいくら相手を殴っても蹴っても、モヤモヤが払拭されるわけじゃなかった。
手の感覚がなくなっても、心の感覚は消えない。
だってあたし……いくら考えないようにしててもダメだ。
涼のことが好きなんだ……。