涼が沙羅ちゃんになにか言ったようで、彼女を置いてどこかへ行ってしまう。
待ちぼうけする沙羅ちゃんのもとへ、2人組の男たちが絡んでいった。
若干根元が黒くなっている金髪のプリン頭のふたりだ。


困った表情の沙羅ちゃんに、そのふたり組みは引き下がらない様子。


涼はなにをやってるんだとイライラして、居ても立っても居られずに「あたし行ってくる」と里佳をその場に置いて店を出た。



「おい!てめぇら、なにやってんだよ!」



こういうとき、自分が男だったらもっと迫力のある低い声が出るのだろうかと、たまに考える。


沙羅ちゃんがあたしに気がついて少しだけ顔を綻ばせた。



「あん?なんだよ、お前」



振り返った男たち。後ろから「泉!?」と里佳が追いついてきた。


すごく、弱そうなやつら。



「その子、あたしの連れだから。どっか行ってくんない?」


「おいおいお前、俺たちが怖くねーの?」


「は?寝言は寝て言え」


「同感だな」



低い声が、後ろからした。
振り返る間もなく、あたしの前に知った姿が飛び込んできた。涼だった。すぐにわかった。


その背中を見るだけでなんでこんなにも切なくなるの。なんで胸が痛むんだろう。



「チッ、男いんのかよ」



男ふたりが舌打ちをしてその場を去った。
あたしは涼から目を離せない。



「沙羅、わり、大丈夫か?」

「うん、泉くんが助けてくれたから……」