「雅くんとか遥くんとかから里佳と出会う前の泉のこと聞いたんだ」
「うん」
「仲間想いのいいヤツだって」
「うん」
「ねえ泉、約束覚えてる?」
忘れるわけ、ない。
柊と付き合うことを決めてすぐ、里佳と約束した。
ーー『少しずつでいいから、柊を見てあげて?……好きになってあげてね』
あの暑い夏の日にあたしは誓った。ちゃんと柊のことを好きになるって、そう心に決めたんだ。
それからの毎日は幸せだった。柊に愛されて、香や里佳が友達としてそばにいてくれた。
他のクラスメイトたちともそれなりにうまくやった。最初はどうなることかとヒヤヒヤしていたけれど、最後にはなんとなくだけど、仲間意識だってできていた。
目の前に座る里佳の目を見ろ、私。
不安げな顔をしている里佳に言え。
『大丈夫、ちゃんと柊が好きだよ』って。
頭のなかで組み立てたセリフを口にしようとしたその瞬間、里佳の背後にある窓の外にいる人物たちに目が行った。
目の前の道路を挟んだ向こう側に、沙羅ちゃんと……涼がいる。
言葉がでなくなる。目線がそこから動かせない。



