「余計なお世話だよ。自分の身は、自分で守れるし」
……涼の笑顔を見ると、ダメだ。
胸がきゅっとする。
1年前よりも男らしく、凛々しくなった涼。
そして男のフェロモンというか……。
色気ある、いい男になって成長している。
あたしは……柊のことが好きなはずなのに……。
また、大切な人を苦しめるのか?
柊も、里佳の気持ちだって知っているのに。
もう私は……誰の心も傷つけたくはない。
「桜?どうしたの?」
「柊……ううん、べつに、大丈夫」
教室に帰って来た柊を見て、柄じゃないのに作り笑いをしてみせた。
柊はいつものように笑って私の頭に手をポンと、置く。
その仕草の奥で目に入った涼の姿に胸が痛くなる。
……心なんてなくなってしまえばいいのに。
そしたらあたしはなにも感じずに、あたしを愛してくれている柊のとなりになんでもない顔でそばにいられて、誰も傷つけなくて済むのに。



