「これしか持ってなかったの。浴衣とか、急に言われても用意できなかったし……」
里佳はちゃんと黄緑に柊色の金魚が泳ぐ浴衣を着ているけれど……
あたしが着ているのは白の甚平。
背中にトラの刺繍が施してあるやつ。
可愛いって言うより、カッコいい。
でも、
カッコいいって言うより、いかつい。
「まぁ、似合ってるからいいんじゃない?」
その香の言葉、
それは喜んでいいのだろうか……。
「泉の浴衣姿、楽しみにしてたのに」
「柊の冗談ッ。笑えないー」
あたしが言うとみんながワハハと笑う。
それからしばらくして目的地の駅に着くと、浴衣を着た女子の集団やカップルなどの人で溢れていて。
人に揉まれるように出口に向かった。



