「なに笑ってんだよ……」
「おかしいから、笑ってるんだよ」
当たり前じゃないか。
それが相手を挑発した様に見えたみたいで、僕は抵抗する暇もないぐらいに殴られる。
君たちのことをバカにするために笑ったわけじゃないけどね。
なんて言い訳しても、ムダななんだろうけど。
「ううっ……かおる……っ」
里佳の泣き声が聞こえる。
片目を開けて、周りの様子を見た。
人通りが多い駅前でのケンカだからか、自然と集まって来るギャラリー。
痛い……。
中心でうずくまる僕を5人の男達が容赦なく蹴って、踏んで来る。
その度に痛みが走り、それに合わせて情けない声が出る。
もう、どうにでも、なれ……。
そう諦めて、目を閉じたその時。
聞こえたんだ。
「―――かおるっ…!」
僕を必死に呼ぶ声が。



