――その時。
涙を手で拭いながら歩いていたから気づかなかった。
前方から5人の不良が歩いて来ていたことに……。
案の定、僕は先頭を歩いていた男にぶつかってしまった。
「おい」
「…………」
何も言わずに右斜めに足を踏み出して去ろうとしたら、肩を掴まれて。
ムシャクシャしていたからか、無意識に、彼の手を勢いよく跳ねのけていた。
空を切った彼の手。
「汚い手で触らないで」
挑発するような言葉を口走った。
早く……
早く……
「ぶつかって来ておいて、それかよ!」
早く、殴ってくれ。
――次の瞬間、
僕の頬に鈍い痛みが走った。



