あの時の、
あの夏の言葉は……
『ダチの兄弟もダチって。俺は思ってるから』
そう、言った。
そう言ったじゃん……。
「――待って、香!」
クマのぬいぐるみを持って走って来たのは、里佳だった。
立ち止まっても、けして顔は見せない。
「香……泣いてるの?」
僕の顔を覗きながら、言った里佳。
泣くな。男だろ?
でも、なんか凄く悲しいんだ。
泉が変わってしまったことが――…
「……見んな」
出来るだけ声を震わせないように言って、再び歩き出すと涙を制服の袖で拭う。
凄く、悲しい。
凄く、裏切られた気分だ。
実は女だったと聞いた時よりも、遥かに。



