「今だってそうだ……」 遠慮がちに近づいて来る柊の手。 「すごく悲しくて辛そうな顔してる」 その手があたしの頬に触れた時、瞬間に涼の悪戯に笑う顔が思い出された。 涼―――… 「ごめっ…離して……」 「これも、わざとに見える」 頬に添えられた柊の手を自分の手で退かそうとしたら、更に柊に手首を掴まれてしまった。 柊が言う〝これ〟とは、あたしの手のことだ。 あたしの、 傷だらけの、汚い手。