俺の愛も絆も、全部お前にくれてやる。



本当にそう思ったからそう言ったんだ。


だけど今は、あの時とは状況が違う。



「香には酷だったかもしれないけど、あれはあたしなりの……」


「昨日、怖くないって言ったの覚えてる?」



あたしの言葉を遮るように質問して来た香に、思わず言葉を引っ込める。


覚えてるよ。その昨日の言葉に、少なからずあたしはドキッとした。


彼の言葉に重なったから。



「確かに怖くない。でも、桜を見てると悲しくなる」



悲しく……?



「とっても可哀想に見えて来るんだよ。人を殴った時も空を見上げた時も、桜はすごく悲しそうだった」



乗降口の扉の方から吹いて来た風がスカートを後ろから揺らし、向かい合う柊の灰色の髪をも揺らした。