息苦しそうにお腹をおさえてうずくまる彼を無視して歩き出す。
隣のクラスもその隣のクラスも、みんなが窓から身を乗り出してこっちを見ていた。
……なにもかもがうざったい。
昇降口にたどり着くと靴箱から靴を取り出して適当に落とす。
「桜!待てよっ!」
柊……。
一度、あたしを追いかけて来た彼に目をやって靴に足を入れる。
「香のこと、本当に友達だと思ってないのか?」
「だったらなに?」
「だったら。……だったら、香を救ったのはなんで?」
真っ直ぐあたしを見つめる瞳は、どっかの誰かさんに似ている。
香は雅を思い出す。
里佳はお調子者の遥を。
そして柊は…―――



