「ちょっと、席変わってよ」
いつの間に来たのか里佳の隣の男に香が言って、席を交換していた。
自由だなぁ。
授業中なのに、誰も聞いちゃいない。
向こうに居た時はみんなふざけながらも、授業は聞いてたよな。先生に茶々を入れながら。
クラスメイトの顔が浮かんで来る。
教室の中はいつも笑いが絶えなかった。
でも今は―――…
「――…桜?」
ボーッとしていた事に気づいたあたしは咄嗟に話しかけて来た柊に笑いかける。
思い出に浸る度に胸が痛くなる。
みんなを思い出す度に胸が痛くなる。
――…戻りたい、なんて贅沢だ。
そんな事を思う自分にイライラした。



