「涼……」
彼の顔が頭に浮かぶ。
のどが潰れるように痛くなった。
出る?出ない?…出る?
……出ては、いけない。
何を聞かれるのかは容易に想像がつく。
あたしは、さようならをどうしても言いたくなかった。
言ってしまえば
全てが終わってしまうから。
――…終わらせなきゃいけないのに。
「もしもし……」
『……泉?』
終わらせる為に、あたしは勇気を出した。
……涼の声。
ちょっと男にしては高くて、でも甘くて色気のある声。
もう、二度と聞けないと思ってた声。
『久しぶり』
「…っ………」
何て言えばいい?
何も言えない。
久しぶりに聞いた涼の声に、たまらなく涙が溢れ出す。



