「いずみ!!」
パタパタッと響いていた足音がすぐ近くの背後で止まる。
振り返ると、真菜のサラサラの黒髪が、あがった呼吸と共に揺れていた。
「ごめん」
「なにが?」
何で真菜が謝るんだよ。
「真菜が、泉にヒドイこと言ったから……。泉、怒ってるんでしょ?」
「怒ってなんか……」
ない。とは言わせてもらえなかった。
「真菜、泉が来てくれて……ほ、本当は嬉しかったっ」
冬なのに、顔が赤い。
寒いのかな。
それとも照れてるの?
「本当なんだからね!?」
「わかった、わかった。だから早く帰れ。風邪ひく」
学ランのポケットに手を突っ込んで、冬の必需品であるカイロを取り出した。
そして、それをポンッと軽く投げて真菜に渡す。



