「お邪魔しま~す……」
心の葛藤も虚しく、来てしまった。
……って言うか。
あたしは涼なんて好きじゃない。
時々ある胸のドキドキはきっと誤差動だ。
普通にしてればいいんだよ。普通に。
友達なんだからさ。
「おかえり……って、泉!」
リビングに行くと真菜が黒のジャージを着て、ソファーに寝転んでいて。
あたしを見るなり、飛んで起き上がった。
「よっ」
「いや、よっ……じゃないし!ちょっとお兄ちゃん、呼ぶなら呼ぶって言ってよ」
そう文句言いながら真菜はぎこちなく手櫛で髪型を整えている。
相変わらず生意気。
あたしと涼限定だけど。
なぜか雅と遥には優しいんだよね。



