「なに……泣いてんの?」
「な、泣いてなんかないしっ!」
涼が悪戯っ子のように笑顔であたしの顔を覗き込んで来た。
カミカミで反論すると鼻で笑われた。
……ドックンドックン胸がうるさい。
「本当、女みたいだな」
ドキンッ――…
なに、その笑顔。
そんなの……反則じゃん。
……涼の笑顔が輝いて見えた。
「そ、それより、傷は大丈夫?」
「んー、平気」
「そ……」
なんだろ、この胸の痛み。
苦しいんだけど、
心地良い。
――…あたし、こんなの知らない。
「あれ?そういえば香……」
いつの間にか居なくなってる。
帰ったのかな。
香を探してキョロキョロする私に涼が首をかしげた。
「泉もケンカしたの?」
「え?」
涼の視線の先には、
「手に血がついてる」
血で汚れたあたしの手があった。
咄嗟に体の後ろに手を隠す。
それを涼が真剣な眼差しで見つめていた。
やば……っ。



