でも黄金の桜なわけがない。
だって昨日俺が見た黄金の桜は女だ。
今、俺が見ているのは、女の黄金の桜に似た男―――。
あー、ややこしい……。
やつは学ランのボタンを全開にして、その学ランの下に赤のパーカーを着ている。
サラサラな蜂蜜色の髪は男にしては長く、女にしては短い。
「桜、泉…?」
黒板にそう書かれてある。
おそらくコイツの名前だろう。
「そうゆうアンタは桜木涼?」
泉が挑発的な声を出す。
声変わりしきれていない、高い声。
俺の眉がピクッと動いた。
すると彼は俺を指差して
「桜木涼、俺と戦え」
と、宣戦布告したのだった。
………は?
ザワザワしていた教室が一気に静かになったかと思うと、一気にみんなが笑いだした。
「おいおいマジかよ!」
「泉くーん、やめときな?」
「ぶっはははは!!」
「涼とヤったら死ぬぜっ」
泉がウザそうに目を細めた。



