夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

涙が濁流になって、頬を流れた。


「補欠が負けるわけないじゃない!」


勝って欲しい。


なんて、そんな甘っちょろい感情ではなかった。


人任せみたいな、そんな感情で抑える事なんかできなかった。


勝たせてあげたいと思った。


あたしの残りの寿命全部を差し出してもいいと思った。


「ここで負けたら、意味がないじゃんか!」


フェンスを握りしめて叫ぶあたしの声は、スタンドの声援にかき消されてしまった。


「翠ちゃん……」


先輩がそっと肩を叩いて来た。


「だって、だってそうでしょ、先輩」


あたし、本当は怖かったけど、我慢して来たの。


今日までずっと、口に出さずに我慢して来たの。


「あたし、我慢した意味がないじゃんか! あまり会えなくても、我慢して来たんだから!」


野球なんかもう辞めて。


あたしだけ……あたしの事だけ考えてくれたらって。


もし、本当にそうなったらどんなにいいのかなって。


思ってたよ。


ずっと。


だけど、何よりも野球に夢中で一途な補欠に、そんな事、絶対に言えなかった。


分かってたから。


補欠は野球を捨てたりできるような男じゃないんだって。


分かってたから。


あたしは、野球には勝てないんだって。


分かってたから。


だけど、そういう補欠が好きだったから。


とことん、応援するって決めたんだ。