先輩は1ミリも目を反らさず、ひとつ息を飲んで、言った。
「夏井がさ。捨てようとしたんだ」
ドクドク、脈を打つ心臓。
「何……言ってんの……」
勝手に声が震えた。
一気に、ざっくりと胸が張り裂けた気分だった。
あたしから目を反らし、先輩がグラウンドを見つめる。
でも、あたしには見ることができなかった。
グラウンドを……彼の姿を。
「ここだけの話だけど、あの日」
あたしが昏睡状態に陥った、大会が幕を開ける前日の事らしい。
「夏井。野球捨てて、翠ちゃんの側に居るって決めたらしいんだ」
何も知らなかった。
そんな事、誰も教えてくれなかった。
母も、先生も、結衣も明里も。
誰もそんな事、教えてくれなかったから。
「あいつ、監督に電話したらしいんだよ」
――明日、行けません
――もう、投げる事ができません
信じられなかった。
あの補欠が、あれほどまでに野球にのめり込んで来た補欠が。
そんな事を口にしたなんて、どうしても信じられなかった。
「いろいろあったらしいんだ。野球部の内輪でな。何があったかまでは、さすがに分かんねえんだけどさ」
風の凪いだ夏空はどこまでも青く、輝いて見えた。
眩しい。
涙で、青色が薄まって見える。
「それくらい、夏井にとってでっかい存在なんだよ。翠ちゃんはさ」
大事な野球捨てる覚悟決められるくらい、大事なんだよ。
そう、先輩は言った。
唐突に、何の前触れもなく、涙があふれた。
「あたしだって大事なんだよ!」
先輩がびっくり顔で、あたしを見ていた。
「先輩、あたしね……怖かったんだ。ずっと」
「夏井がさ。捨てようとしたんだ」
ドクドク、脈を打つ心臓。
「何……言ってんの……」
勝手に声が震えた。
一気に、ざっくりと胸が張り裂けた気分だった。
あたしから目を反らし、先輩がグラウンドを見つめる。
でも、あたしには見ることができなかった。
グラウンドを……彼の姿を。
「ここだけの話だけど、あの日」
あたしが昏睡状態に陥った、大会が幕を開ける前日の事らしい。
「夏井。野球捨てて、翠ちゃんの側に居るって決めたらしいんだ」
何も知らなかった。
そんな事、誰も教えてくれなかった。
母も、先生も、結衣も明里も。
誰もそんな事、教えてくれなかったから。
「あいつ、監督に電話したらしいんだよ」
――明日、行けません
――もう、投げる事ができません
信じられなかった。
あの補欠が、あれほどまでに野球にのめり込んで来た補欠が。
そんな事を口にしたなんて、どうしても信じられなかった。
「いろいろあったらしいんだ。野球部の内輪でな。何があったかまでは、さすがに分かんねえんだけどさ」
風の凪いだ夏空はどこまでも青く、輝いて見えた。
眩しい。
涙で、青色が薄まって見える。
「それくらい、夏井にとってでっかい存在なんだよ。翠ちゃんはさ」
大事な野球捨てる覚悟決められるくらい、大事なんだよ。
そう、先輩は言った。
唐突に、何の前触れもなく、涙があふれた。
「あたしだって大事なんだよ!」
先輩がびっくり顔で、あたしを見ていた。
「先輩、あたしね……怖かったんだ。ずっと」



